災とは、故郷の喪失である。
自己を想起させる実在の喪失である。
これに対し、失われた姿を象ることは可能である。
これは像と呼ばれる。
像とは、自己の様に自我を想起させる実在である。
像は転じて字となる。
字とは、自我を任意に想起させる像である。
或は泣き喚き、心象を想起することは可能である。
心象とは、過去に於ける自己であり、自我として想起される表象である。
これは號と呼ばれる。
號とは、心象を想起させる声である。
不在を否定し、自己を自我として呼び覚ます叫びである。
これは親を呼ぶ赤子の泣き声に似ている。
これは親を偲ぶ喪に似ている。
声は音と共に消える。
號は転じて歌となる。
歌とは、心象を想起させる声である。
現象を忘れさせ、心象を想起させる声である。
歌は、人を動かす力となる。
歌は音と共に消える。
歌は転じて話となる。
話とは、自我を任意に想起させる声である。
現象と表象の関係を明示する声である。
話は、人を動かす力となる。
話は音と共に消える。
話は転じて文となる。
文とは、自我を任意に想起させる像である。
表象と表象の関係を明示する像である。
文は、人を動かす力となる。
文は実在として残る。
斯くて記号により、世界は表現される。
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