現在、絶えることなく発生し続ける雨雲が、日本列島を蔽っています。
波ではなく、津波のように押し寄せる雨雲は、もはや呆然と立ち尽くすしかない様な状況をもたらしています。
我々は、「敗北」として受け入れるしかないのでしょうか。
いやいや、細やかながらも抵抗を試みてみたいものです。
諦めるよりかは、何か得られるものがあるでしょう。
まずは、「知る」必要があります。
何故、雨雲は発生するのでしょうか。
「んなこた知っとる・・・」
いやいや、意外と知らないものです。
「彼を知り、己を知れば、百戦殆うからず」(「孫子」謀攻篇)
大気の流れ
自転による風
地球が止まっている状態から、いきなり自転を始めたところを想定してみよう。
地球の自転により、大気は置いていかれる。
故に、地上から見て最初はどの地点でも東風が吹く。
緯度で比較すると、低緯度の円周は、高緯度の円周に比べ長い。
故に、低緯度の風速は、高緯度の風速に比べ速い。
故に、赤道付近の風は、他の地域と比べ、相対的に最も速い東風となる。
摩擦抵抗
地上付近の風は、摩擦抵抗により東側に引っ張られる力が働く。
故に、地上の風は、上空の風と比べ、相対的に遅い。
但し、上空の風も、空気抵抗により、同じく東側へと引き摺られる。
大気圏外から定点観測した場合、上空の風は、地上の風と比べ遅くはあるが、東へ移動する。
上昇気流
地表で温められた大気は軽く、上空の大気は冷たく重い。
故に、地表の大気は上昇し、上空の大気は下降する。
太陽光により最も温められる地域は、赤道周辺である。
故に、赤道周辺の上昇気流が最も強い。
赤道周辺の上昇気流は、摩擦抵抗の少ない上空が相対的に速い東風である為、地上から見た場合上昇に伴い西に流れ、大気圏外から見た場合、西に引き延ばされる。更に上昇する際地球が東に回転しているので、地表から離れるに従い西に引き延ばされ、その現象は顕著に現れる。
下降気流
赤道周辺は他の地域と比べ相対的に気温が高く、その上昇圧力は相対的に継続して強い為、上昇した気流は赤道周縁に逃れ、冷えて重くなり下降する。
下降する気流は、地表に近付くに従い、摩擦抵抗の影響を受け、自転する方向と同じ東向きの力が働く。
故に、地表から見た場合東に流れ、大気圏外から見た場合、東に引き延ばされる。
制止していた地球が突然回転を始めた場合を想定すると、初期状態に於いて上記の現象は見かけ上のものに過ぎず、雲が西から東へ引き延ばされても、地上から観測して風も雲も東から西へ流れる。
偏東風と偏西風
軈て、自転と摩擦抵抗の間に均衡が訪れた時、大気全体は、平均して自転と同じ速度で東方向に回転している。
この時、大気には遠心力が働いている。
極点へ移動する大気は、円周が短くなる。これに対し、回転速度を上げることにより、エネルギーが保たれる。故に、赤道周縁に逃れる気流には常に東向きの圧力が加えられることになる。更に、下降気流には摩擦抵抗と自転により、常に東向きの圧力が加えられる。その結果、東へ流れる偏西風が生じる。
極点から離れる大気は、円周が長くなる。これに対し、回転速度を下げることにより、エネルギーが保たれる。故に、赤道周辺流れ込む気流には常に西向きの圧力が加えられることになる。更に、上昇気流は上空で西へ引き延ばされる為、常に西向きの圧力が加えられる。その結果、西へ流れる偏東風が生じる。
極点では、太陽光エネルギーの影響が微少であり、他地域の影響を受けぬ限り、基本的に東風が吹く。
低気圧と高気圧
低気圧
周囲より気圧の低いところ。
風が反時計回りに吹き込む
地上で熱せられた空気は上昇する。
上に向かう力が働いている為、下に押しつける気圧は低下する。
赤道周辺は、太陽光が直角に当りやすい為、温度が上昇し易い。
故に、上昇気流の多くはここで発生する。
上昇気流が発生する場合、地上から吹き上げられる為、地上の摩擦力が働く。
北半球を考えた場合、緯度が低い程円周は長くなる。
故に、東向きの加速度は、低緯度程高くなる。
低緯度で上昇した気流は北へ押し流され、上空で西に引き延ばされる。
より高緯度で上昇した気流も同様に引き延ばされるが、より低緯度での上昇気流に働く東向きの力の方が強い為、その力の差は蓄積していき、軈て渦を産む。
この渦は、反時計回りに大気を吸い上げ、低気圧と呼ばれる。
赤道周辺では継続して上昇気流が生み出される為、上昇した大気は北へと押し出される。
緯度が上昇するに従い、低気圧の南側の緯度と北側の緯度の円周差が等比級数的に上昇していく為、回転速度が加速していく。
そして、台風やサイクロン、ハリケーンと呼ばれるものへと発展する。
高気圧
周囲より気圧の高いところ。
風が時計回りに吹き出す
上空で冷やされた大気は下降する。
下に向かう力が働くので、下に押しつける気圧は上昇する。
赤道周辺は、他地域と比べ気温が上昇しやすい為、上昇圧力が高い。
故に、赤道周縁に於いて、大気の下降は生じやすい。
北半球の場合、気流の下降は北側から生じる。
地上に押しつけられた大気は、摩擦抵抗が生じ、地球の自転の影響で、東向きの力が働く。
相対的に、同時刻、遅れた下降してくる南側の大気に対する摩擦抵抗の影響は小さく、あくまで相対的に見ると西向きの力が働いている。
この力の差は蓄積していき、軈て渦を産む。
この渦は、時計回りに大気を地上に押しつけ、高気圧と呼ばれる。
等圧線
気圧の等しい場所を結んだ線。
前線
温暖前線
低気圧は、反時計回りに大気を巻き上げる。
北半球の場合、東側の南方から温められた大気が北上する。
巻き上げられる大気の湿度が飽和している場合、上空に巻き上げられ冷えるに従い霧が発生する。更に湿った空気が供給されると、雨雲が発生する。
上昇する起点は相対的に低い温度の大気との接触面であり、この接触面を線で表現したものが、温暖前線である。
温暖前線に於いて、冷えた大気が下に滑り込み、そこに出来る緩やかな傾斜を温められた大気が沿う様に巻き上げられていく為、薄く広がる雲が発生する。緩やかに上昇する為、穏やかな雨をもたらす。
寒冷前線
低気圧は、反時計回りに大気を巻き上げる。
北半球の場合、西側の北方から冷たい大気が南下する。
巻き上げられる冷たい大気は、南側の暖かい大気とぶつかると上昇しようとするが、温かい大気の方が軽い為、互いに上昇しようとする。故に、縦方向に急速に上昇する気流が発生する。この接触面を線で表現したものが寒冷前線である。
寒冷前線に於いて、大気が急激に上昇する為、激しい雨をもたらす。
寒冷前線は冷たく重い大気の前線である。重い為、前線の大気を押しのける力は温暖前線と比べ相対的に高く、故に、温暖前線より速く移動する。
停滞前線
赤道周辺の大気は太陽光に温められ、上昇気流を発生させ低気圧を生み出す。
低気圧は南北に押し出され、上空で冷えて重くなった大気は下降を始め、高気圧を生み出す。
下降した大気は一部は南へ流れ、一部は北へ流れる。
北半球の場合、北へ流れた大気は、より冷たい空気と接触する。
この接触面を線で表現したものが、停滞前線である。
停滞前線は構造上、恒常的に生み出されるが、黄道の動きに対し約一ヶ月遅れで南北に移動する。(大気への熱放出が一ヶ月遅れで発生するということか?)
北半球の場合、冬至から夏至に掛けて北上し、夏至から冬至に掛けて南下する黄道の動きを、約一ヶ月遅れで追いかける。
日本の場合、夏至周辺、又は立秋後に於いて国土を蔽うことになり、前者を梅雨と呼び、後者を秋雨と呼ぶ。
この梅雨及び秋雨は定期的に訪れる為、その期間の平均降水量の上下に依り、雨雲を発生させるエネルギー量の推移を推し量ることが出来る。
梅雨に於ける平均降水量が増えている場合、雨雲を発生させているエネルギー量が増加していることを表すと言えよう。
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