テレ東NEWS 2020/5/18
2020/1/30 台湾 民進党 蔡英文総統
「台湾は世界に貢献できる能力と責任がある。WHOは政治的理由で台湾を排除しないで欲しい。WHOには、台湾が参加する余地があるべきだ。」
2020/4/8 WHO テドロス事務局長
「数ヶ月の間(ネット上で)私への個人攻撃が続いている。暴言・・・人種差別的な発言・・・黒人差別的な言葉だ。」
「三ヶ月前からの中傷は台湾からだった。正直に言おう。台湾からだ。台湾の外交部はこのことを知りながら、何もしなかった。むしろ侮辱と中傷のさなかに台湾は私を批判し始めた。」
2020/4/9 台湾外交部 欧江安報道官
「何の検証もなしにテドロス氏は台湾に事実無根の非難を浴びせた。テドロス氏が根拠のない発言を即時修正し、わが国に謝罪することを要求する。」
2020/4/29 日本 安倍首相
「(台湾の参加について)どこが反対しているかということはよくご承知の通りでございます。その反対をしている国が影響力を行使しております。台湾はかつてオブザーバーとして参加をしていたわけでございます。蔡英文政権になって(WHOは)態度を変えてしまったという問題があります。そういう政治性をなくしていくというのが本来のWHOでなければならないわけでありますから、当然私もその点、国際社会に向かって主張していきたい・・・」
2020/5/6 アメリカ ポンペイオ国務長官
「各国に、WHO総会への台湾のオブザーバー参加への支援を求める。テドロス事務局長にも、台湾を総会に招待するよう要請する。」
2020/5/12 アメリカ議会 諮問機関の報告書
「中国が新型コロナウィルスの世界的流行に乗じ、台湾への外交、軍事的圧力を強化している。」
「WHOも台湾排除に加担している。」
2020/5/14 中国外務省 趙立堅報道官
「世界には中国は一つ。台湾は中国の不可分の領土。」
「台湾で民進党が権力を握って以来、独立の立場を堅持し、「一つの中国」を否定してきた。そのため台湾がWHOに参加するための政治基盤はもはや存在しない。」
2020/5/15 中国外務省 趙立堅報道官
「新型コロナウィルス発生以来、台湾の民進党は政治利用してきた。台湾がWHO総会への参加を訴え続ける目的は、伝染病を利用して独立を画策することだ。中国は断固反対する。」
事実の視点
「私の視点は事実に置かれ、中立でも、加担でも、客観でもない。事実からの乖離を炙り出し、是正を行う。」
台湾の主張
台湾は、2019/12/31の時点でWHOに対し新型コロナウィルスへの注意を促しており、その脅威への対応を迅速に行い国内への感染拡大を最小限に抑えた。その功績から学ぶべき事が一切無いのであろうか。言わずもがな、台湾の主張は妥当である。
テドロス氏の主張
発言の全てを聞いているわけではないので、多くは語れない。
明確に判るのは、ネット上で誹謗中傷を受けていることと、それが台湾によるものだという認識を持っていることの二点である。
ネット上での誹謗中傷
事実であると思われる。
台湾からの攻撃であるとの認識
三ヶ月前からの中傷ということは、1月前半からということであろうか。
1/13にタイで最初の海外での感染者が確認されていることから、感染拡大に対するものではない誹謗中傷が始まっていたものと思われる。
台湾が恨みを抱いたとするならば、それは12/31に発せられた警告がWHOに反故にされた事であろうか。台湾メディアがいち早く武漢での感染拡大を報道していたことは知っていたが、そこにWHOに対する非難があったかどうかは確認できていない。
断言できないが、事実に基づく認識ではなかろうか。
発言の位置付け
テドロス氏が台湾から誹謗中傷を受けたので、台湾の新型コロナウィルスへの対応とその成果を世界各国が共有する必要はない、とは言えない。
個人的な発言としては妥当である。
WHO事務局長の発言としては不当である。
WHOは「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(世界保健機関憲章第一条)を目的としており、個人の尊厳の為にその目的が損なわれてはならない。
組織の為に自らを犠牲にする姿勢とは、真逆である。
日本の主張
妥当である。
アメリカの主張
妥当であるが、米中冷戦という狭い構造に位置付けられている。
中国の主張
地政学上、台湾は中国にとって極めて重要な地域である。
故に、台湾の独立への動きを警戒することは妥当である。
しかし、台湾独立というストーリーを拡大解釈して、事実の全てであるかの様な印象を与えている。
この印象は、事実から乖離している。
台湾は、武漢での感染拡大をいち早く察知し、それをWHOに警告した。
台湾は、国内への感染拡大を防ぐ為、いち早く中国からの渡航を禁止した。
結果として、新型コロナウィルスへの対応に最も成功した事例となった。
初動の対応に問題のあった中国とWHOに対し、相対的にその存在感は増大する。
WHO総会に台湾が参加した場合、その発言の影響力は、相対的に中国を上回る事が予想される。
面子と組織の維持が直結している中国にとって、これは看過出来ない問題である。
事実は、台湾の独立が問題なのではなく、面子である。
「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」の上に、面子を掲げているのである。
覇権獲得を目指す国家として、その姿勢は不当である。
覇権獲得とその体制の維持を目指すのであるならば、面子よりも公共の利益を優先させる事が可能とならなければならない。不可能なまま覇権を握れば、反乱と弾圧の繰り返しが待っている。これは予め容易に予想可能である為、各国の協力を得られず、覇権獲得は困難となろう。
覇権には、自己犠牲を受け入れるだけの器が求められる。
自己犠牲を受け入れるから、周りは支えなければならなくなる。
他国の面子の為に自らを犠牲にする国家は、果たして事実として存在しうるのであろうか。
「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」の為に自らを犠牲にする国家に魅力を感じ、更にその国家の為に自らを犠牲にする人間は、果たして虚構なのであろうか。
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