アンボイナ事件

歴史というものは皮肉なもので、決定的な敗北が、後に全てを手に入れる切掛をもたらすことがあります。

曾てイギリスは、ある事件により莫大な利権を諦めることになりました。

この事件により、東アジア交易の本拠地をインドに定めることになります。

そして、不利な状況を覆し、大英帝国の栄光を摑み取ります。

戦術的敗北が、戦略的敗北に必ずしも繋がらない一例を、交易の歴史に位置付けてご解説頂きました。

有り難う御座います。

交易

農業の歴史より古いのではないか?

狩猟・採集 → 交流 → 不足の認知 → 交易

農業 → 都市 → 市(経済) → 分業 → 交易

香辛料

小さくて付加価値の高い交易品

cf. 「エリュトラー海案内記」AD.1st

ローマ ー インド 香辛料交易

cf. プリニウス「博物誌」より?

胡椒500g=4~15デナリウス

1デナリウス=2,200円か?

抗菌・防腐・防虫作用あり

→ 食料保存に必要との認識

→ ローマ帝国では、金や銀と同等の価値を持つと言われた。

イスラム台頭

AD.7th~ 東地中海の覇権がイスラム勢力の手に渡る。

→ 香辛料の入手困難に

→ 十字軍遠征による交易ルート奪還

→ 失敗

航路開拓

AD.1492 コロンブス アメリカ大陸到着

AD.1498 ヴァスコ・ダ・ガマ(ポルトガル) インド到着

AD.1522 マゼラン(スペイン) 世界一周達成

モルッカ諸島

AD.1521 マゼラン到着

しかしそこには、既にポルトガル人が居た。

クローブ・ナツメグ唯一の産地

AD.1529 サラゴサ条約

スペインによるモルッカ諸島領有権放棄。

→ ポルトガル領に。

イギリスとオランダ

AD.1581 ネーデルランド北部7州(オランダ)、スペインから独立を表明

AD.1581 イギリス レヴァント会社設立

オスマン帝国から獲得した交易特権「カピチュレーション」を活用する為、イギリス人12人に対し、特許状を与えた。

AD.1600 イギリス東インド会社設立

オランダの海上交易に脅威を感じたイギリスレヴァント会社が、オランダに対抗する為ジョイント・ストック・カンパニー(株式会社の前身)として設立。

AD.1602 オランダ東インド会社設立

香辛料交易の価格競争による暴落と、イギリス東インド会社の台頭を脅威とみなし設立。

AD.1619 オランダ バタヴィア城建設

オランダ東インド会社東インド総督ヤン・ピーテルスゾーン・クーンがバンテン王国からこの地(現在のインドネシア首都ジャカルタ)を租借し、要塞バタヴィア城を築いて、オランダ東インド会社の、アジアにおける本拠地とした。

以降、モルッカ諸島北部は、テルナーテ島に居住するオランダ人によって支配された。南部はオランダに懐柔されたアンボイナ人(アンボイナ島原住民)によって支配された。

対するイギリスは当初、海賊を出自とした海軍の性格もあったのか、欧州勢力の圧政に苦しめられる原住民に闇取引を持ちかけ、その反抗を助けていた。

バンダ諸島(モルッカ諸島南部に属する、ナツメグ等の唯一の生産地)の住民は、そんなイギリスに対し、独立貿易を試みる。

これに対し、オランダ東インド会社は原住民を虐殺し、生き残りは他の島で奴隷とした。

AD.1623 アンボイナ事件

日本人浪人七蔵 アンボイナにあるオランダ商館城壁の構造や兵数を調査

→ オランダ東インド会社総督ヤン・ピーデルスゾーン・クーン、七蔵を拷問にかける。

→ 七蔵、イングランド商館長ガブリエル・タワーソンとの共謀(商館の略取)を自白。(後に事実ではなかったことが判明)

→ イギリス人10名、日本人9名、ポルトガル人1名に対する拷問、殺害。

→ ガブリエル・タワーソンを殺害。柱に突き刺し公開。

顛末

イギリス

イギリスは東南アジアから撤退。インドに拠点を移す。

反オランダ感情の高揚。

オランダ

オランダは、20世紀までモルッカ諸島を含むインドネシアを領有。

プランテーション経営により香辛料の大量生産を行うが、供給過剰により価格暴落。

オランダの交易量の9割を占めるヨーロッパ貿易は、イギリスとの対立により衰退。

凋落の一途を辿る。

私見

戦争の発端は、不足に対し、相手の都合如何に関わらず、激怒することから生じるものであろうと考えているが、全ての課程に於いて、それが垣間見える。

「だって、しょうがないじゃん」

「ああ、そうね」

で済むものを、理解できないから陥る悪循環。

これが組織の肥大化が起きると、構成員の多くは直接確認しようがなくなるから、更に問題は悪化する。

膨大に抱え込んだ無理解の嵐に、組織は否応なく流される。

これを解消するには、

直接知り(事実は揺るぎない確信を与えます)、

流されず(事実を理解しているから、変な方向には流されません)、

説明し(理解していない相手は、怒っています。状況をきちんと説明しましょう)、

理解させ(納得してもらえれば、相手も矛を収めるでしょう)、

内々に解決する(余計な人を巻き込んで、収拾不能にしてはいけません)。

これが基本ではあるが、それが出来ないから組織を肥大化させ対応してきたのであり・・・

肥大化した組織に於いては、

正確な情報を的確に取得し(調査、取材、聴聞、諜報)、

不確かな情報に動かされることなく(確認、研究、曖昧な情報の公開を自粛、対外的には現状を維持)、

対外的な説明を行い(正確な情報の提示、個人的な信頼関係の構築、組織的な交流、首脳陣の交流)、

納得させ(事実確認の要求、個人的な信頼関係に基づく情報発信の要求、メディアを通じた情報発信の要求、首脳陣による説明の要求)、

外部を巻き込まず、内々で解決する。

こんなところだろうか。

現状はどうだろう・・・

全然出来てないね。

なぜ出来ないのかは、また別の機会に。

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